虫歯を放置するとどうなる?
虫歯になると、歯を削らなければならないため、ついつい歯科医院への受診を先延ばしにしてしまう方も少なくありません。誰しも痛い思いはしたくないものなので、その気持ちもよく理解できます。ただ、虫歯は自然に治ることのない病気で、放置すると症状は悪化の一途をたどるのみであり、できるだけ早く治療を受けた方が賢明といえます。そこで今回は、虫歯を放置すると何が起こるのか、わかりやすく解説します。
歯質がどんどん溶けていく
私たちの歯は、エナメル質という人体で最も硬い組織で覆われています。歯を削る際にダイヤモンドの粉末がまぶされたバーを使用するのはそのためです。それくらい硬くて丈夫なエナメル質も“酸”に対して抵抗力が低く、虫歯にかかると歯質がどんどん溶けていってしまうのです。これを専門的には脱灰(だっかい)現象と呼び、食品に含まれる酸だけでなく、虫歯菌が産生する酸によっても起こり得ます。
歯痛が発生する
エナメル質には、痛みを感じる神経が分布していません。ですから、比較的軽度の虫歯であれば痛みを感じることはありません。それが象牙質にまで進行すると、ふとした時に歯痛が生じることがあります。象牙質には歯髄の一部が分布しているからです。冷たいものや甘い物がしみる場合は、もうすでに象牙質まで虫歯が進行していることを意味します。それでもなお虫歯を放置すると、いよいよ歯の神経まで感染が広がり激痛を生じるようになります。この段階を歯髄炎(しずいえん)といいます。
歯髄炎の症状と治療法
虫歯で歯髄炎を発症すると、歯の神経を抜く必要が出てきます。いわゆる抜髄(ばつずい)を行ったのち、歯髄が収まっていた根管内のきれいにする根管治療を実施します。この処置歯とても難易度が高く、ケースによっては数ヶ月かかることも珍しくありません。成功率も低いため、結果的に歯を失うこともあり得ます。ただし、成功すれば歯を保存できるので、最後まできちんとやり切ることが大切です。
虫歯を放置し続けると痛みが消える?
歯髄炎を発症してもなお虫歯を放置し続けると、いつしか痛みが消えるようになります。これは歯髄が感染によって死んでしまった結果です。痛みを感じる器官そのものが破壊されれば、どのような刺激を受けても痛みを感じることはありません。そこで注意しなければならないのが、歯痛の消失=虫歯の自然治癒と勘違いしないことです。風邪や胃腸炎などは、病気が治癒することで痛みがなくなりますが、虫歯は例外です。痛みが消失しても、依然として病変は残っています。そのまま何もせず放置すると、病態はさらに悪化していきます。その結果、根尖性歯周炎や顎骨骨髄炎などへと発展していくのです。
まとめ
このように、虫歯は放置しても自然に治ることはありません。その病態は確実に悪化していくので、自覚次第、治療を受けることが大切です。ケースによっては、極めて深刻な問題を引き起こすこともあるため、“たかが虫歯”とは考えず、気になる症状が認められたら当院までご相談ください。